思いで

 

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今年で六年目を迎えるそな田には

開店当初に苦いとも言える思い出がいくつかあります。

 

そのひとつがたしか二年目の夏ごろだったように記憶しています。

コースでお召し上がりのお席へ感想を伺ったところ

「素材にいろいろな味がするのにどうしてたくさんの調味料を使うんですか」

 

――ひとつの意見と切り捨てることはいくらでもできますが

開店当初の先の見えない私たちには目からうろこのご意見でした。

次の日から調味料を使う理由をいつも問いながら

試作をかさねていくようになりました。

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そうして出来上がったお料理にこんなひと皿があります。

浅く燻した酢〆の鯖を味の軸に据え、チコリと林檎、葉野菜といくつかの食材を和えるのです。

調味料と呼べるものは最低限。あとはそれぞれの素材が互いの良さを引き出してくれます。

 

できれば召し上がっていただきたい。

 

そう思えるひと品をふやしながらのれんをあげてこられたのも

日々のご意見あってこそ、です。

あのときの方に

ふたたびお会いすることが叶いましたら

――そっと御礼をお伝えしたい――

この料理をお出しするたび思うのです。