8月の香りと花言葉

当月のそな田、女性用お手洗の香りはバーベナ。

 

一昨日、ナイトキャップがわりに伺うバーで

「あのね」と話しかけてこられた女性が

優しくさとすような声でこう言われました。

 

「女には大好きな男と大嫌いな男しかいないの。おぼえておいて」

 

彼女の名言にまわりは深くうなづきながらも

その、きっと、いつも、なすすべのない女性の強い

——ときに一方的な——ジャッジに翻弄され、

かつて傷ついたことのあるだろう男性だけが

苦笑とともに杯をかたむけます。

 

聞けば、彼女は7月末の大雨のやんだ夜に

忘れた傘を取りに来られたとのこと。

そして、今年の暮れにひと月ほど入院されるとのこと。

いつもそうやって、女性はあっさりと

大切なことをさらりと言う。

21世紀を迎えて十余年もたった今になって

女だ男だというのもどうかと思いますが

少なくとも僕はそんな音調では話せない。

 

——およそワイン1杯程度の短い時間でしたが

いろいろな思いが交錯する時間でした。

 

月をまたぎ、夏の過渡期に入ろうとする今、

新しいハンドソープとクリームを化粧室だけに置いたのち、

そうだった、完璧に強い人などいないんだった。

そんなあたりまえのことをあらためて思い知ったのは

ふと気になって調べたバーベナの花言葉を知ったとき。

パソコンのモニターに小さく細やかな明朝体で映されたそれは

「私のことを祈ってください」と。