ノーコメント。
僕が敬うある方は自身の仕事についてのインタビュー中に
「ノーコメント」という答えをしばしば口にします。
インタビューなんだから何でも答えろ、と思いはしませんが
インタビューなんだから宣伝にもなるんだろうけどな、と思う分野の質問であっても
「ノーコメント」
——たとえるなら
配送の運転手に「安全面でもっとも気を付けていることは?」とか、
小学校の先生に「教師になって一番よかったことは?」など、
その仕事の中心に大きくかかわる範囲だと思う質問でも、
たびたび「ノーコメント」
その記事を読んでいても、
インタビュアーのひたいにじんわり汗が浮かんでいる姿を想像してしまうのは
きっと気温のせいだけではないでしょう。
しかしながら、記事を読むうちに読者側も気づきます。
配送の運転手が安全面でもっとも気を付けていることがひとつなはずはないし、
小学校の先生に教師になって一番よかったことを限定して話してしまえば
生徒やだれかを誤解させたり傷つけるかもしれません。
もしもこの先何十年かこのそな田が続いて、
多少なりとも後進の方に評価をされるようなことが万にひとつあったとして
「食べ物や飲み物を美味しいといわれるために気を付けていることは何ですか」と訊かれれば
僕も「ノーコメント」とこたえよっと。ちょっとかっこいいし。
冗談はさておき、
自由に喋ることが、時にどれだけ言葉や人目に支配され
語らない決意こそが、じつはいかに雄弁で自由であるか。
自由であるか。