雨の来店。

こんにちは。 連日、雨が降るだけでなく気温も低いですね。

数年前のこの季節、昨日をしのぐざんざ降りの金曜日がありました。

まだお店も開店間際でしたから、

いまよりごひいきのお客様も少なく、朝からさえない気分でした。

「今日はもう仕方がない」とあきらめかけていたところに

びしょ濡れのおふたりが「以前から気になっていました」とお見えに。

私たちは喜んで、出来る限りのおいしい――と思える――

お料理やお酒をおすすめしましたところ、

とても喜んでお帰りになりました。

 

しかし、その日以来あのお二人にお会いすることは叶っていません。

そしてたぶん、もう二度とお会いすることはできません。

雨に当たって寒く冷たいことにも気付かず

御髪やお洋服を拭いたり乾かすようなことも思いつかないまま、

△△産のお魚です、▲▲のワインです、日本酒です、と、

――やけに気色ばんだ笑顔で―― 言いたいことだけをまくし立ててくる

そんなお店にどんな魅力がありましょう。

 

豪雨の日にいらしたお客様を

私たちは雨以外の理由で失ったのです。

 

それから幾度、初心を抱え続けていると言い切ってみても。

いまだ私は。